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株式会社 Impress Watch/PC Watch
編集長 伊達 浩二 氏
 
フリーランスジャーナリスト
大河原 克行 氏


NECパーソナルプロダクツ株式会社
PC事業本部 開発生産事業部 モバイル商品開発部
主任 梅津 隆広 氏


NECパーソナルプロダクツ株式会社
PC事業本部 商品企画本部 商品技術部
島貫 正治 氏
 
株式会社NECデザイン プロダクトデザイン1
エキスパートデザイナー 河崎 圭吾 氏










デザイン試作のモックアップ







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伊達
モバイルノートは、読者の関心が高く、記事のアクセス数が多い人気分野です。
2月19日に発表された「LaVie J」は、メーカーとしてひとかたならぬ強い意志を持って開発された製品だと聞いています。今日はその「思い」と、開発の中でこだわったポイントをうかがいたいと思います。
島貫
ここ数年、各社から「モバイルノート」といわれるものが、いろいろと登場しました。しかし、同じパソコンメーカーとしては、どうしても納得できない部分がありました。 「軽量」、「長時間駆動」、「頑丈さ」といった要素を実現しているが、「筐体の薄さ」や「高性能」といった部分が実現できていないものが多い。個人的に、それで本当に良いのだろうかという疑問を感じていたんです。 そこで、NECが出すモバイルノートであるならば、そういう部分にもこだわりたい。つまり、「この部分を生かすために、この部分は犠牲にしよう…」ではなく、全てを盛り込んだ欲張った製品を、まったく白紙の状態から作りたいと思ったんです。 社内では、「一番完成度の高いモバイルパソコンを作りましょうよ!」という意気込みで開発プロジェクトがスタートしました。
大河原
製品を開発するにあたり、どんなユーザーが利用すると想定しましたか。
島貫
まず、最初に想定したのはこれまでモバイルノートを利用してきた30歳台のビジネスマンです。ただ、もう1つこれまで全くモバイルノートを利用したことがない、20歳前後の大学生にも是非使って欲しい。そういう意味では、モバイル好きの人と、モバイル初心者の二つの層に受け入れられる製品を目指して開発を進めました。おそらく、この狙い通りのユーザーが購入してくれれば、女性層など新しいマーケットへの波及効果があるのではないかと思っています。
大河原
「一番、完成度の高いモバイルパソコン」とは、具体的にどんな特徴を持ったものですか。
島貫
コンセプト作りを欲張ったので、どうしても「この1点が特徴です!」とは言いにくいんです。あえて絞り込めば、「強さ」と「美しさ」ということでしょうか。 そこにもう一つ付け加えさせてもらうことができるなら、「使い勝手」という点もあげたいです。デザイナーの河崎さんからは、外形デザインの美しさだけでなく、「使う美しさ」も重要な要素だと指摘されましたので。
河崎
私が今回の製品をデザインするにあたり、一番こだわったのは、大阪弁でよく使う“シュッとしている”というのを実現することでした。
大河原
“シュッとしている”?
河崎
シュッとしている」というのは完璧!素晴らしい!チョークール!といった完全に物事が昇華された状態を表現する時に使われる大阪弁です。LaVie Jを持っているしぐさ、使っているしぐさ、使わないで部屋に置かれている様子、全てがシュッと見えることを目指しました。LaVie Jは毎日使うもので、いつもそばにあるものですから、LavVie Jがある生活の一コマ一コマがシュッと見えるように引っ掛かりのない生活に溶け込むデザインを目指しました。
梅津
“シュッとした”デザインを実現するために、本体の開発にはいろいろと苦労をしました。本体の厚みだけで実は前回のものより2.5mmほど薄くなっています。
CPUは変わらないのですが、チップセットの発熱が倍になって5Wだったものが、9Wになっています。その熱を逃がすための工夫をたくさんしています。ファンの口径を決め、熱輸送のためのヒートパイプの大きさを決める。ところが、それがなかなかうまく行かず、調整を入れた結果、冷却機構の部分が前回よりも5gほど重くなってしまいました。
小さいファンを高速で回すとどうしても騒音が出てしまいますので、大きいファンをゆっくり回すことで騒音を抑え、性能も落とさずに済んだのですが、重量だけ重くなってしまったのです。しかし、このサイズのモバイルノートでここまで冷却機構にこだわっているものはなかなかないと思います。妥協しないで作り込んだ部分です。

伊達
製品の企画から発売まで、どれくらいの時間がかかっているのですか?
河崎
私が関わってからだけで1年かかっています。
伊達
デザイナーが1つの製品に1年関わるというのは、当たり前のことなんですか?
河崎
まあ、1年といってもこの製品にかかりっきりというわけではなく、ほかの製品にも関わってはいたのですが、確かに1つの製品に1年携わるというのは通例はあまりないことです。
大河原
長い開発期間の中で、自分達が作りたいものを作るためのポイントとなるのはどんな部分なのでしょう。
島貫
「これは売れる製品になる!」と社内の人間に感じてもらうことが大事なんです。 製品の仕様を決めていく際にも、いろいろな声があがるわけです。デザイン、サイズはもちろんのこと、実装するインターフェース、搭載アプリケーション、添付品にいたるまで、ひとつ決定する際にも、「本当に大丈夫なのか」、「この製品を買わないユーザーが出てくるのではないか」といった声がやはり社内からは出てきます。そういう時には、ユーザーアンケートなどを行ない、根拠をきちんと示す必要があるわけです。
梅津
いろいろと話が出てくる中で、議論が白熱しすぎて困ったこともありましたよね(笑)。
河崎
ああ、「これが通らないなら、会社を辞める!」という人が出てきたり。
大河原
それはただ事ではないですね。
梅津
あの時はかなりシリアスな雰囲気になりましたよね…
島貫
スタイリッシュなモバイルノートを作りたいのであれば、PCカードではなく、「ExpressCard/34はどうか?」、「CF(コンパクトフラッシュ)はどうだ?」といった声もあがりました。それは開発サイドからあがった意見で、「その方が省サイズ化をはかれる」というわけです。しかし、それで本当に思ったような売れ行きをあげられるのか?という反論がありまして、激しい議論の応酬がありました。 結局、その議論は私の上司が、「そこは自分が責任をとるから、PCカードを載せるべきだ」ということに決着したのですが。

大河原
梅津さんが一番こだわったのはどの部分ですか?
梅津
天板ですね。最初のサンプルでは、フラットなはずの天板がフラットになっていない。実はそれには原因があって、天板の四辺の立壁をしっかり繋いでLCDユニットの剛性を高めているのですが、そのせいでなかなか綺麗なフラットにならなかったのです。この問題解決が大変でした。
伊達
天板の色が黒なのは、NECの製品では珍しいですね
島貫
実はカラーバリエーションラインナップ含め、これもいろいろありましたが…何色がベストなのか、いろいろと検討しましたが、フラットデザインがもっとも主張できる色ということで、「やはり黒!」というのが結論でした。
梅津
今回は、デザイナの河崎さんが、質感にも徹底的にこだわっていたので、いつまでかっこよくキレイに使ってもらえるように、上位機種の天板にはスクラッチリペア機能を搭載しました。ただ、瞬間的に修復されてしまうので、この良さが、なかなか伝わりにくいんですが。
伊達
それは贅沢な悩みですね。
梅津
はい。おそらく、スクラッチリペア機能を持っていることを気付かずに使われるお客様というのも出てくるでしょうね。
伊達
スクラッチリペアは、持ち運ぶ機会が多いモバイルノートでこそ生きる機能ですね。このキーボード手前のパームレストは普通はフラットになっていることが多いですが、この製品ではタッチパッドの部分が低くなっていますね。
河崎
キーボード手前のパームレストがへこんでいるのは、本体の開け易さ、LED表示の見易さ、スペースキーの親指での押し易さ、パームレスト部分の強度も得やすいことなどを整理した結果出てきたかたちです。凹み周囲のR20は液晶を閉じた状態で圧力がかかった時に、液晶に線上の黒い線がつくのを防いでいます。
伊達
キーボードの書体についても、これまでのLaVieとは違う個性的なものですね。
河崎
キートップの書体についてもこだわってデザインしました。
伊達
キーピッチは何mmですか。
島貫
17.5mmですね。ほとんどの人に使いやすいピッチだと思います。
河崎
キーボードについては、10年ほど前から研究していて、打ちやすさや見やすさなどで成果を挙げています。キートップについても、書体だけではなく、形状や配置に、こだわっています。ぜひ、触れてみてほしいですね。

大河原
1年以上かけて企画・開発した製品も、いよいよ、出荷直前です。開発スタッフとして、発売後の目標はあるのでしょうか。例えば、「これだけ売れたらOK!」といった数値目標があるとか、街角でこの製品を持っている人をたくさん見かけたらOKとか…。
島貫
ビジネス的には新幹線でこの製品を利用している人を見かけるようになったら、製品が売れる良いサイクルに入ったといえると思います。個人的には、オフィス街のカフェでこの製品を使っている人を見かけるようになったらうれしいです。
梅津
やっぱり、とにかく売れて欲しいです! 売れて、売れて、ブームになる…くらいになると本当にうれしいです。あ!でも、売れすぎて物が足りなくなって受注残を抱える事態になるのも困るんですが。
大河原
実際問題どうなんでしょう。個人情報保護法の影響で、会社からノートパソコンを持ち出すことを禁止する会社も増えています。大手販売店に聞いても、「最近、モバイルノートの売れ行きがちょっと厳しい」という声も聞きます。
島貫
そういう状況をなんとかして変えなければいけない!というのがLaVie J開発の命題でもあります。やはり、力を入れて開発した製品が増えれば売り場も活気づくと思うんです。「タフ&ビューティ」をキーワードに店頭展示にも力を入れていきますので、モバイルノートを取り巻く環境もちょっとは変わってくるのではないかと。
伊達
今回の製品は、「LaVie J」という名称は引き継いでいますが、一見しただけで、まったく別の製品になったことがわかります。とくにデザインは180度と言って良いぐらい変わり、オリジナリティのあるものになったと思います。モバイルノートは持ち歩く機会が多く、自分にふれあうことが多い製品だけに、いろいろな考え方があり、製品をつくるアプローチも1つではないと思います。ただ、今回のLaVie Jは、NECらしい豊富な機能と安心感に加え、作った人のこだわりが形として見える尖った製品になりえていると思います。
ライバルの多い市場ですが、有力な選択肢の1つとして候補に挙げて良いでしょう。できるだけ多くの人が見て触れて、そのフィードバックを受けて成長していくことを期待したいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
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